あるたま草

毒にも薬にもなりません。のんきな毎日のひとりごと。

松本清張の文庫本その1

東野圭吾も一通り読んでしまったので、今は通勤時間に松本清張を読んでいます。母親が昔よく読んでたので、私も高校時代は代表作ぐらいは読んでいたのですが。今読むと、昭和は遠くになりにけりって思います。

砂の器

高校時代に一度読んだので再読です。昭和のレトロな雰囲気が逆に新鮮です。どうしても、動機については今の時代では共感するのが難しいのですが、淡々と追いかける刑事の執念に脱帽です。

◆黒い画集

これも時代背景はレトロですが、人間のすることは今も昔も変わらないんだな、という印象です。意外と深い内容でした。

ゼロの焦点

お見合い結婚して一週間で夫が失踪。相手の事をよく知らないまま結婚することが昔はあったんだなぁと驚きます。これも動機は昭和の歴史といったもので心情を理解するのは難しかったです。しかし主人公の虚しさがかなり伝わりました。

黒革の手帖

おお、これは面白かったです。現代にもそのまま人間関係の複雑さが通じます。主人公に同じ女性として同情はしてしまいましたが、やはり悪いことはしてはいけないなぁと思ったり。欲に負けず、真面目に生きるのが一番です。

わるいやつら

なるほどなぁーという感じです。主人公が馬鹿すぎて、情けなさ過ぎてあきれます。結末はなんとなく予想ができましたが、謎が最後に解けてスッキリしました。

けものみち

ストーリーが最後まで謎なので面白かったです。しかし主人公民子の浅はかさには呆れます。自分は普通に暮らせて良かったって思います。

◆黒の様式

久々に短編集でした。なかなか意外性がありました。松本清張はこうも色々なストーリーを思いつくものだと感心します。

球形の荒野

意外とシンプルなストーリーだったので分かりやすくて良かったです。終盤は人間ドラマになって、最後の1ページだけで急に泣けてしまいました。

◆眼の壁

美人の女性が結局主人公に関わらなかったのが少し拍子抜けでした。いつもながら昭和の時代が感じられる主人公の旅、人との関わりが懐かしい感じです。

◆影の地帯

あーこれ主人公死んだな、と思いきや。動機は今でもありそう、殺人方法は今では無いかなぁって思いました。これは結局主人公と美人の女性が付き合うことに。

十万分の一の偶然

これは、予想以上に面白かったです。大切な人を奪われた悲しみ、怒りと復讐への執念を強く感じました。東野圭吾の「さまよう刃」も復讐ものだったけど、こちらの方がなぜか深く心に染みます。最後もまた、切ない。主人公にかなり感情移入してしまいました。

◆落差

主人公の非道さに腹が立ちました。結局弱い人間が損をするような結末。なんかすっきりはしませんでしたが、人間ドラマとしては面白かったです。

◆霧の旗

よくある復讐の話ですが、死刑囚の妹の逆恨みにしか思えません。お金がなくても無実であれば守られるべきなのは確かですが。うーん、難しいですね。

◆憎悪の依頼

説明文通り、「多彩な魅力」溢れる短編集でした。何か他の作家の作品と似てた箇所もあるのは、松本清張は昭和55年に既にこれらを書いていたわけで、後の作家が先駆者に倣っているのだなぁと思いました。人間への興味(想像力)が凄いです。

◆点と線

アリバイ崩しの推理小説です。松本清張のこういう作品に出てくる刑事は味があります。トリックもなるほどなぁと。当時の交通状況だともっと斬新だったのでしょうね。

◆共犯者

短編集。なかなかどの作品も読み応えがありました。「距離の女囚」が切ないです。しかし、夫の鞄を持ってバス停まで送りに行ったりって、時代背景が今とだいぶ違うのが却って新鮮です。

◆駅路

今はありがちと言えそうなシチュエーションですが、語り口が上手いせいか引き込まれます。人間もいろいろ。

◆証言

短編集です。表題の作品は既読でした。「地方紙を買う女」「種族同盟」は人間の弱い部分がよく描かれています。悪い事はしたらいけません。

◆渡された場面

面白かったです。犯人は読者に分かっていて、色々な手掛かりから捜査が犯人に近付いていくのがスリリング。しかし最後のカタカナ文章は読みにくいです。時代の違いですね。

◆危険な斜面

日常から道を踏み外した人々。スリリングな話ばかりでした。時代が変わっても感情の動きは一緒だなと思いました。